#1315 不安定な株式市場になってきていますが、
#1315 不安定な株式市場になってきていますが、
DKNリサーチニュースレター
#1315、2013年6月2日(日本語版)
(エレクトロニクス実装の最新海外情報)
(DKNリサーチホームページ: http://www.dknresearchllc.com )
今週の話題
不安定な株式市場になってきていますが、
この2週間足らずの間の東証の相場は大幅下落となりましたが、みなさんはどのように見られていますか?かなりの方々が「やっぱり来たか」と感じておられるのではないでしょうか。何しろ実態経済が動いていないところに、株価だけが一本調子に上がって、昨年の12月には8000円そこそこだった日経平均が、わずか5ヶ月で15000円に届くところまで来たのですから。証券会社などは、今回の株価急落は一時的な調整局面で、全体としてはまだまだ上がるポテンシャルがあると強気な態度を変えていませんが、その根拠は薄弱です。証券会社としては、売買が活発にならないことには手数料収入が増えませんから、自分たちの都合で個人投資家を煽動しているということでしょう。
少なくとも日本のエレクトロニクス業界の実態は悲惨な状況が続いています。第1四半期(1〜3月)の日本メーカーの出荷動向を見てみると、パーソナルコンピュータ、携帯電話、薄型テレビ、デジタルカメラなど主要な電子機器は、いずれも前年同期比で20〜30%の大幅減少になっています。当然のことながら、そこで消費されるべき電子部品やプリント基板の出荷も前年同期比で二桁のマイナス成長がつづいています。とにかく、日本の民生用エレクトロニクス産業はどん底状態で、回復の兆し等ほとんど見えない状況といってよいでしょう。
海外はどうでしょうか。日本ほどではありませんが、やはり縮小傾向で、主要な電子機器の出荷は、軒並み前年同期比でマイナス成長となっています。世界の民生エレクトロニクスの生産基地である台湾の主要メーカーは、上半期での回復には悲観的で、第3四半期以降の回復に期待しているようです。エレクトロニクス産業の米といわれる半導体製品の出荷も、世界レベルで昨年末からかなりのスローダウンとなっています。米国の景気は緩やかな回復傾向にあるとされていますが、エレクトロニクス産業においてはどん底状態が続いており、回復の兆しなど見えない状況です。ヨーロッパは今回の景気後退の引き金になったくらいで、どこかの国の火消しが終らないうちに別の国で火の手が上がるというような状況で、まるでモグラたたきをやっているようです。
このように日本のエレクトロニクス産業にとっては、国内需要が減少しているだけでなく、輸出すべき相手が火の車状態ですから、少しばかり円安に振れたからといって、日本の製品の国際競争力が高まるなどというような楽観的な見通しが通用するほど甘くないのです。もっとも、当のエレクトロニクス企業にしてみれば、このような厳しい状況は、他所からいわれるまでもなく、重々認識していて、予防線も張っていたのですが、株式市場の勢いに押されて、警報は聞こえなかったようです。日銀の金融緩和策も、エレクトロニクス企業にとってはあまり助けにはなりません。必要なのは一時的な資金ではなく、注文なのです。
今回のアベノミクス相場については、情報操作によって強引に作られていた気配があります。ある筋からの圧力があり、マスメディアは景気回復のニュースを前面に出して強調し、悲観的な情報は押さえ込まされたようです。今回の株価急落について、政府は一応平静を装っていますが、内心は穏やかではないのが本音ではないでしょうか。とにかく夏の参議院選挙まで保ってくれればと考えていたのでしょうから。
DKNリサーチ、沼倉研史(マネージング・ディレクター)
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今週のヘッドライン
1.MIT(米国の工科大学)5/17
薄いグラフェン層を重ねることにより、画期的な特性を持つトランジスタを形成することに成功。
2.ZVEI(ドイツの基板業界団体)5/17
3月におけるドイツの基板業界の出荷額は、前月比で4%の増加。前年同月比では6.4%の減少。
3.Chicony Electronics(台湾のキーボードメーカー大手)5/20
需要低迷が続くノートブックPCの減少分を埋めるために、タブレット用外部キーボード、カメラモジュールなどに注力。
4.Stevenage Circuits(英国の基板メーカー)5/20
イスラエルOrbotech社のインクジェットプリンターSprint 120を、少量多品種のソルダマスク用に設置。
5.LG Display(韓国のディスプレイメーカー大手)5/20
カナダのショーで、5インチのフレキシブルOLEDを使った携帯電話を初めて展示。
6.ASE(台湾の半導体組立て大手)5/20
中国の子会社ASE Assembly & Test社を通じて、東芝が中国で運営する半導体組立ての子会社を買収へ。
7.IMS Research(米国の市場調査会社)5/16
スポーツやフィットネス用モニターの需要は、2013年の4380万ユニットから、2017年には5620万ユニットに成長と予測。
8.AT&S(オーストリアの基板メーカー最大手)5/21
需要の低迷に対応するために、唯一片面基板を製造していたKlagenfurt工場の閉鎖を決定。
9.BCC Research(米国の市場調査会社)5/22
フレキシブル・デバイス市場の進展に伴い、RTR装置の需要は、2012の108億ドルから、2017年には227億ドルに増加と予測。
10.Isora GmbH(ドイツの基板材料メーカー大手)5/20
基板メーカーのジャストインタイムサービスをサポートするために、QTA(Quick Turnaround)プログラムを開始。
11.SEMI(米国の半導体製造装置業界団体)5/21
4月における北米の半導体製造装置産業のB/Bレシオは、前月から0.03ポイント下がって1.08に。出荷増えるも受注が追いつかず。
12.ITIS(台湾の市場調査機関)5/23
市場の不透明さにもかかわらず、2013年における台湾の電子部品メーカーの出荷額は、前年比3.5%増の8785億NT$に達すると予測。
13.DIGIYIMES(台湾の業界メディア)5/24
第1四半期における世界のPC用液晶モニターの出荷は3310万ユニットで、前年同期比で13.9%の減少。
14.MIT(米国の工科大学)5/24
有機半導体化合物を使って、高電圧対応のTFTパワートランジスタを開発。極めて低温での処理を実現。
15.HIS DisplayBank(韓国の市場調査会社)5/27
2012年における世界のタッチスクリーンの出荷は13億ユニット。今後用途が広がり、2017年には30億ユニットに達すると予測。
16.Royal College of Art(英国)5/24
電気伝導性のあるペイントを開発。紙、プラスチック、布などへの塗布が可能。今後人体への適用性なども検討。
17.DIGIYIMES(台湾の業界メディア)5/27
第3四半期におけるタッチスクリーンタイプのノートブックPCの出荷は、前期比で50%以上増加の700〜750万台に達すると予想。
18.University of Leuven(ベルギー)5/27
鉄、マンガン、コバルトのような遷移金属から、ネオジム、サマリウムのようなレアアースを抽出する技術を開発。
19.CEPD(台湾の市場調査機関)5/27
4月の台湾市場は依然として縮小傾向。これで8ヶ月連続での減少。企業の雇用状況は比較的安定。
20.APCB(台湾の基板メーカー大手)5/28
第2四半期の出荷は、前期比で10〜20%増の見込み。日本からの受注が増加。タイに建設した新工場はフル操業状況に。
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June 2, 2013