#1317 JPCAショー2013
#1317 JPCAショー2013
DKNリサーチニュースレター
#1317、2013年6月23日(日本語版)
(エレクトロニクス実装の最新海外情報)
(DKNリサーチホームページ: http://www.dknresearchllc.com )
今週の話題
JPCAショー2013
6月5日(水曜日)から3日間、東京ビッグサイトにおいて恒例のJPCAショー2013が開催されました。2011年から縮小傾向が続いている日本のプリント基板業界は、昨年末からさらに落ちこんでおりましたので、今年のJPCAショーがどうなるかは、関係者でなくとも気になるところだったと思います。
蓋を開けてみると、フロア面積では前年とほぼ同じ規模で、来場者の数はかえって増加しておりました。最終的な公式データを確認しっておりませんが、おそらく3日間で12万人を越えていたのではないかと思われます。海外からの来場者も少なくなく、特に韓国、台湾からの来訪者が目立っていました。私の思い入れのせいかもしれませんが、ことしは物見遊山的、お祭り的な雰囲気は少なく、来場者はもちろん、展示する側にも真剣さが感じられました。
全体のフロアスペースが変わらない一方で、出展者数は若干減っていますので、一社あたりのブースサイズは大きくなっていたことになります。しかしながら、派手なデコレーションやパフォーマンスは影を潜め、実用的な展示が多かったように思います。出展者の顔ぶれにもかなりの変化があり、かつての常連だった日本の基板メーカー、材料メーカーがだいぶ姿を消している一方で、台湾、韓国のメーカーの出展が多くなっており、特に韓国の材料メーカーの大きなブースが目立っていました。このあたりは業界の勢いを反映しているといってよいでしょう。ただ、その割には、客はあまり入っていないようでした。日本人にとっては、ちょっと入りづらい雰囲気があるようです。
JPCAショーの特徴のひとつは、セミナーの豊富さですが、今年も様々なテーマで、セミナーが行われていました。おそらく20を越えるセッションが準備されており、その大部分が無料なのです。アカデミックな研究発表から、新製品、技術の紹介、初心者向けの入門講座など、いずれの会場も用意された椅子はほぼ満杯で、立ち見の聴講者も少なからず見受けられました。出席者は何か新しいビジネスのタネはないかと探しているようで、真剣さが伝わってきました。
ショー全体で話題になっていたトピックスとしては、LDI、埋込部品基板、高周波回路用低損失材料、プリンタブルエレクトロニクスといったところが上げられるかと思いますが、今年特に目立った新展開はあまり見当たらず、今ひとつ盛り上がりに欠けていたように感じます。
一見地味ですが、結構人を集めていたのがアカデミックゾーンです。ここではセミナーのほかに、多くの大学や様々な研究機関が研究室単位で小さなブースを構え、最新の研究開発成果を紹介しておりました。個々のテーマは決して大きなものではないのですが、素材から始まって、表面処理、回路設計、計測技術等々、個々のメーカーでは扱いづらいものが数多くあり、来訪者との間で活発な議論が交わされておりました。
今年目立ったのがシニアの来訪者が結構多かったことです。シニアの方々が集まると(私も含めて)昔話に花を咲かせる同窓会ムードになりがちなのですが、今年は少し違っていました。一旦はビジネスの前線から引退したか、引退しかかっている経営陣の方々が、低迷する市況に危機感を持って、現場に復帰してきているようです。現在の業界の危機は、若い者には任せておけないと感じておられるようです。
今年のJPCAショーを見ていると、多くの企業が従来型のプリント基板ビジネスについては既に見切りを付け始めているようで、必死で次の飯のタネを探していたようです。皆さんはどのように感じられたでしょうか。
DKNリサーチ、沼倉研史(マネージング・ディレクター)
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今週のヘッドライン
1.University of Louisville(米国)6/7
インクジェット印刷プロセスを使って、OLEDと無機量子ドットを組み合せたハイブリッド光源を実現。高い発光効率。
2.IDTechEx(英国の市場調査会社)6/11
2012年における世界の3D印刷の市場は10億ドル。2025年には40億ドルまで成長すると予測。
3.NPD DisplaySearch(米国の市場調査会社)6/12
市場では55インチのAMOLEDテレビが商品化。しかし低い工程歩留まりのためコスト高となっており、普及には時間がかかる見込み。
4.IBM(米国のエレクトロニクス最大手)6/12
全世界で6000〜8000人の人員を削減する計画。全従業員の2%未満。労働組合は同意。
5.Samsung Electronics(韓国のエレクトロニクス最大手)6/13
需要のスローダウンに対応するために、Galaxy S4の部材の調達を抑制。第2四半期:2000〜2500万、第3四半期:2000万台分。
6.Ecole Polytechnique Feswrale de Lausanne(スイス)6/12
ポリウレタン樹脂をメタライズした材料をサブストレートとして、ストレッチャブルデバイスの実用化を図る。
7.WitsView(台湾の市場調査会社)6/13
2013年における世界のテレビ出荷は、前年比1.1%増の2億880万台に達する見込み。韓国がトップシェアで35%。
8.Engineered Material Systems(米国の材料メーカー)6/13
プリンターヘッド等に使われるフレキシブル基板のワイヤボンディング部封止用に新しい樹脂を商品化。
9.Career Technology(台湾のフレキシブル基板大手)6/14
中国のスマートフォンメーカーからの受注が増大中。これまでの売上げ比率10%が、2013年中には25%に達する見込み。
10.Pegatron(台湾のエレクトロニクスメーカー大手)6/14
8月から、Apple社の次世代製品、iPad miniの出荷を開始する予定。
11.NPD DisplaySearch(米国の市場調査会社)6/18
2012年における世界のタッチパネル市場は1200万平方メートル。2013年には倍増、2015年には3590万㎡にまで成長と予測。
12.ZVEI(ドイツの基板業界団体)6/18
2013年における、ドイツプリント基板産業の市場規模は、前年比1.3%増の13億ユーロに達すると予測。
13.Csun(台湾の装置メーカー)6/18
好調なモバイル機器市場に支えられて、台湾のフレキシブル基板メーカーが積極的な製造設備増強。第2四半期の装置出荷は大幅増。
14.Foxconn Electronics(台湾のEMS最大手)6/18
社内のコネクター部門のNetwork Interconnection Business Groupを分離独立させる方針。競合メーカーはさらなる価格競争を懸念。
15.SPIL(台湾のICパッケージメーカー大手)6/17
今後モバイル通信用ICの需要が増大すると見て、今後3年間でハイエンドICパッケージの製造能力を増強するための積極投資。
16.Netronix(台湾のODMメーカー大手)6/18
2012年におけるeブックリーダーの出荷は2百万台で、世界シェア10%。今後3年間でシェアを35〜40%まで上げ、トップを目指す。
17.DIGITIMES(台湾の業界メディア)6/18
第2四半期における台湾のノートブックPCの出荷は前期比で改善。それでも大手メーカーは下半期に対して慎重な見方。
18.Asustek(台湾のエレクトロニクス企業大手)6/18
不振が続く従来タイプのパーソナルコンピュータに替わる事業として、ウエラブルデバイスのプロジェクトを積極展開。
19.LG Innotek(LGグループの電子部材メーカー大手)6/18
全社的な合理化の一環として、材料、テープ回路を含むプリント基板事業を売却する計画。
20.Gartner(米国の市場調査会社)6/18
2013年における世界の政府機関が消費するIT関連予算は、前年比0.1%減の4495億ドルとなると予測。
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June 23, 2013